あおもり話題チャンネルについて 芸術・文化 レジャー・エンタメ 自然 買いモノ タイムリー
平成23年2月18日金曜日

 そろそろ春かな、と思うとどっと雪が降ったり・・・・・・などと安定しない天気が続いているが、皆様いかがお過ごしだろうか。
 ところで読者の皆様は、高倉健が主演し、第1回日本アカデミー賞で主演男優賞・音楽賞を受賞した、名作映画「八甲田山」をご存知だろうか。今回はその映画の題材「八甲田山雪中行軍遭難事件」の資料を数多く展示している幸畑の「青森市八甲田山雪中行軍遭難資料館」を紹介する。(田名辺一至)
 
 ◆   ◆   ◆   ◆
 

雪中行軍とは?   ※雪中行軍が辿ったルート(記者作成/PDF)
 時は明治35年、日本とロシアの関係は悪化、緊迫の一途をたどっていた。
 それを背景に、(なお、日露戦争は明治37年〜)「青森歩兵第5連隊」が、八戸平野に敵が侵入することを想定し、青森から八甲田山を越えて、三本木(現在の十和田市にある。青森からは多くの峠や山道を越えて行かなくてはならなかった。)まで軍を進めることができるか否かの調査を計画した。それが『雪中行軍』である。
 そして行われた行軍だったが、悪天候に阻まれ、青森第5連隊210名中199名が亡くなるという惨劇となってしまった(救援隊発見時の生存者は17名だったが、入院治療中の経過不良で6名が亡くなった)。

 
 ◆   ◆   ◆   ◆
 
 現在までに、雪中行軍については、様々な研究がなされてきていて、いったい雪中行軍とはどういったものだったのかの大部分が判明してきている。しかし、未だ解明されていない謎もある。その1つが、隊員のうちの一人、山口少佐の死である。実は、山口少佐の死には諸説あるのである。
拳銃自殺をはかった
 この見解は、責任を感じて入院中の病床で拳銃自殺を図ったというもの。いっけんなるほど、と思うが、これが正しいとすると、少し不審な点が出てくる。1点目は、凍傷で指が動かないはずであるのに、どうやって引き金をひけたのか。2点目は、周囲の病室にいた入院者の中に、本来発砲があったのであれば聞こえたであろう銃声が聞こえたという者が1人もいなかった、という点である。
拳銃自殺をはかった
 199名もの犠牲者を出したことに対する、陸軍からの圧力ではないか、という見解もある。(高濃度のクロロフィルを使用→毒殺か?)
 
 この謎は、現代でもまだ解明されていない。ぜひ、資料館にて各の見解をもってみてほしい。
 
 ◆   ◆   ◆   ◆
 
 青森隊出発と同じころ、弘前でも『弘前歩兵第31連隊』が行軍を行っていた。しかし、弘前隊は1人の死者も出なかった。では、青森5連隊と弘前31連隊において、生死を分けたものとはいったい何だったのか。ここで、2隊の様々な点を比較してみよう。
       
 
 ◆   ◆   ◆   ◆
 
 また、館長の松岡さんにお話を伺い、見どころを尋ねたところ、「(資料館を)若い人にこそ見ていってもらいたい。八甲田山は、冬には雪化粧をし、夏には新緑が・・・といったふうに、四季を通してすばらしい山である。しかし、未だにスキーやスノーボード、山菜取り等において遭難する事件もおきている。その点を、きちんと留意してもらいたい。」
さらに、「199名もの犠牲者がでてしまったことにはワケがある。これは昔の人たちが実証済みだ。これを教訓にしてほしい。」
と述べた。
 最後に、これから訪れようとしている方、八甲田山雪中行軍遭難事件に興味のある方に何かひとこと、という記者の問いには、
「どんなにきれいに見える山でも、必ず怖い面をもっている。甘く考えると、自然は恐ろしいですよ。」
と、忠告をいただいた。
 また、映画「八甲田山」や原作小説と実際の事件には、いくつか相違点がある。相違点を探してみるのもおもしろいだろう。
 四季折々の美しさを見せてくれる八甲田山。しかし、光の裏には陰があるように、美しさの裏には恐ろしさも兼ね備えている。皆様もぜひ、先人たちがいかに苦労したのか、そのことから生かせることは何かを、探してみてほしい。




施設名 八甲田山雪中行軍遭難資料館
住所 青森市幸畑字阿部野163-4
電話番号 017-728-7063
開館時間 9:00〜18:00(4月〜10月)
9:00〜16:30(11月〜3月)
休館日 12月31日、1月1日
2月の第4水・木曜日
料金 一般 ………………260円
大学生/高校生 …130円
70歳以上 …………無料
中学生以下 ………無料
アクセス 青森駅からは・・・
@
青森駅B番乗り場から「田茂木沢」行き、もしくは「田茂木野」行きに乗車、「幸畑墓苑」前下車、徒歩すぐ。
A
青森駅B番乗り場から中筒井経由幸畑団地方面行きに乗車、「幸畑」下車徒歩約10分。青森駅からの運賃は350円
配布版(PDF)


バスを降りると、案内標識がある。



雪中行軍についての資料がわかりやすく展示されている。


雪中行軍に参加した兵士の写真。



館内では、雪中行軍のドキュメンタリー映像や兵士の手記などが見られる。


行軍で数少ない生存者の一人、後藤伍長の銅像。一人で行軍を続け、凍死寸前で保護された。